主婦やシニアの方の活躍創出部門

エントリーNO.06

シニアの創意工夫×若いセンスが活きた
オリジナルナイフの手づくりキット『It’s my knife』

<ふるさと名品>

オリジナルナイフ手づくりキット
『It’s my knife』

<商品の入手・問い合わせ先>

神沢鉄工株式会社

〒673-0456 兵庫県三木市鳥町27番地
TEL 0794-83-1100 / FAX 0794-83-1104

FEDECA ブランドサイト
http://www.fedeca.com/

It’s my knifeシリーズ 専用サイト
http://www.fedeca-mm.com/

<会社概要>神沢鉄工株式会社
〒673-0456 兵庫県三木市鳥町27番地
<事業概要>地場産業である金物・建築道具をはじめとする、木工刃物、ガーデニングツール、クラフトマンツールの製造・販売

神沢鉄工株式会社 代表取締役

神澤秀和(かんざわ ひでかず)さん(57)

兵庫県三木市で、老舗金物メーカー・神沢鉄工株式会社の4代目として生まれる。1980年、神沢鉄工に入社。2000年に代表取締役に就任。現在は創業時から続く建築道具の生産に加え、オリジナルの刃物ブランド『FADECA(フェデカ)』を展開。ナイフを通してものづくりに親しむ、創意工夫に満ちたライフスタイルを提案している。

デジタル技術は模倣が容易
誰にも真似のできない手仕事を

兵庫県南部に位置する三木市は古くから鍛冶の町として栄え、現在も、いわゆる大工道具や機械工具を中心とした金物産業が盛んなことで知られている。

神沢鉄工株式会社は、そんな鍛冶の町で異彩を放つ、創業120余年の老舗金物メーカーだ。創業時からの主力製品は鋸(のこぎり)や穴あけ道具などの建築道具。ユニークな発想で機能性を高めた製品には、国内はもとより世界定番のロングセラーも多い。特に、3代目の神澤多美男社長の代は高度経済成長期だったことも後押しし、海外にも販路を拡げて事業は目覚ましく伸展した。

しかし、ホームセンターで安価な類似品を購入できる時代に入ると、価格競争が激化。2008年以降の世界的な不景気も影響して、小規模な金物メーカーは苦戦を強いられるようになる。それは、従業員数40名に満たない神沢鉄工も例外ではなかった。

4代目となる現社長・神澤秀和さん(57)は、当時のことをこう振り返る。
「デジタル化された技術は、再現が容易です。世界のどこでも、鍛冶の技術を持たない人でも、機械操作さえ覚えれば似たような製品を生産できる。このまま価格競争を続ければ、大量生産が可能な資本力のある大手企業が優位になり、我々のような小規模メーカーは消えてしまうと思いました」

原点に返ろう。
デジタル化による大量生産と戦うのではなく、簡単に真似のできないハンドメイドの技術を活かし、日本の美しい木と鉄の文化を残していこう──。
そう考えて自社の技術と製品を見つめ直し、数ある刃物の中でクローズアップしたのがナイフだった。

ナイフは、「削る」「切る」といったものづくりの基本作業に欠かせない、工芸の原点ともいえる道具。神澤さんは「ナイフにもっと親しんで欲しい」との思いを込め、2014年に生活に寄り添ったナイフを展開する新ブランド『FEDECA(フェデカ)』を立ち上げた。

ブランド立ち上げから3年余。現在、大きな反響を呼んでいるのがオリジナルナイフの手づくりキット『It’s my knife』だ。木製ハンドルを自分好みの形に削り、同梱の刃をネジ留めすると、世界に1つの「自分仕様」のナイフができあがる。工程は単純だが、自分の手で、自分の手に馴染むように形づくったナイフはおのずと愛着の湧く存在になる。

『It’s my knife』を企画した浅郷剛志(あさごう たけし)さん(36)は言う。
「自分のナイフをつくることで、ものを削る楽しさを知って欲しくて企画しました。つくったナイフで封書を開けたり、手持ちの道具を使いやすく削ったり、暮らしの中でごく自然に親しんでいただけたら、と思っています」

  • 日本有数の鍛冶の町である「播磨の三木」で、金物メーカーを営む神澤秀和さん。「日本の木と鉄の文化を伝承したい」と語る

  • オリジナルナイフ手づくりキット『It’s my knife』。木製ハンドルを削ってナイフをつくる楽しさが受け、人気商品に

  • 『It’s my knife』でつくったナイフの数々。自由な発想でハンドルの形やデザインをアレンジできるのが魅力

  • 『It’s my knife』を企画した、浅郷剛志さん。「削る作業の楽しさを、多くの方に知っていただけたら嬉しいです」

シニア採用で広がる
創意工夫と自立の精神

「ものづくりの原点に返ろうと決めたとき、新たにシニアの方を採用したいと思ったんですよ」

神澤さんの言葉を聞き、ハンドメイドに立ち返るべく経験豊富なベテラン職人を求めていたのかと思いきや、そうではなかった。
「ものが豊かな時代に育った世代は、利便性を追求しがち。例えば何かが欲しいとき、私たちは真っ先に『どこで買えるだろう』と考えます」

神澤さんによると、昭和の高度経済成長期に活躍した世代は安易に買おうとはせず、まず、「今あるもので代用できないか」「どうやったらつくれるだろう」と考えるという。 「彼らは、ものがなければ自分でつくり、ものごとに直面したら何をすべきか自分で考え、自ら動きます。私自身も含め、今の若い人はそういう発想になりにくい。業績が苦しい時代こそ、創意工夫あふれる昭和の知恵と、自立した姿勢を持つシニアの力がぜひとも必要だと思ったんです」

契約社員の松谷充幸さん(71)は、かくして入社したシニア世代の1人。長年、溶接職人として働いてきた経験を持つ松谷さんのもとを訪ねると、工場で長く大きな鉄板を叩いていた。
「敷地内の門のレールが曲がって調子悪いから、直しとるんや」
誰かに頼まれたからではない。状況を見て必要だと思えば、専門である溶接以外の仕事も率先して取り掛かる。そんな松谷さんの出社は、毎朝7時30分。
「毎日会社の敷地で飼ってるチャボにエサをやってから出社や。夏になったら、芝生の水まきもしてから来るねん」
チャボの話をするときは、何ともやさしい目になる。

同じく「昭和の知恵」として採用された片山一成さん(76)は、神戸市役所で定年まで勤め上げた元公務員。70歳のときに神沢鉄工の契約社員になった。
「担当業務はいろいろです。切削機械の操作やパーツの検品、『It’s my knife』の包装もやります。仕事を通して社会と接点を持ち、毎日若い人といろんな話ができることが元気のもとになっています」
穏やかで落ち着いた物腰ながら、仕事には全力投球。
「どんな小さなことでも、裏表があったらあかん。見ている人がいようがいまいが、100%の力でやろうという気持ちでいます。あとは、現役のときの思いにかじりつかないこと。今の自分を大切に、今ある仕事を一生懸命やるのみです」

  • 溶接職人の松谷充幸さんは若手従業員に檄(げき)を飛ばすこともあるそう。いわく、「ものごとに関心を持つ子は伸びるわなあ」

  • 「この年齢で働く場所があることがありがたい」と話す片山一成さん。常に真摯に仕事と向き合い、従業員仲間からの人望も厚い

多世代が力を合わせ、
ものづくりの楽しさを広めたい

神沢鉄工ではシニアの採用に伴い、新たに2つの制度を導入した。1つは60歳を定年とし、その後は応相談で延長もできる再雇用制度。もう1つは、契約を半年という短めの期間にすることで、そのときどきの体力や家庭の状況に合わせ、勤務形態を細やかに調整できる仕組みだ。現に、片山さんも入社当初は9時~16時の週5日勤務だったが、体調を崩したのをきっかけに9時~15時の週4日勤務に変更。おかげで体力的に無理なく働き続けることができるという。

年末には、会社の敷地を活用した「ガーデン」と呼ばれる田んぼで育てたもち米を使い、従業員総出で餅つきをするのが恒例行事。若手従業員も、片山さん、松谷さんを含むシニア従業員も、全員が協力し合って薪火で米を蒸し、臼と杵で餅をつく。シニア世代には懐かしく、若い世代には新しい遊びとして浸透し、誰もが心待ちにしているイベントだ。

ときには仕事を離れて多世代の従業員が同じ時間をともにする。そうしたシニアとの交流が、若手従業員のものの考え方や、仕事に対する姿勢に与える影響は計り知れないと神澤さんは言う。
「何より、シニア世代の『創意工夫して自力でつくる発想』と、若い世代の『心地よさやデザイン性を重視するセンス』が融合し、いい製品が生まれ始めている。そのことが、一番ありがたいですね」

神澤さんはこんな話もしてくれた。
「オランダに、うちと同じくらいの規模・従業員数で質の高いガーデンツールをハンドメイドし、世界に認められている会社があります。縁あってその会社を訪ねたところ、生産過程をすべて見せてくださった。その社長に、『他社の人間にここまで見せていいんですか?』と尋ねたら、彼はまったく問題ないと笑い、『We are Artist』と言ったんです」

我々はアーティスト。それは、形や工程を真似しても、決して同じものをつくることはできないという、クラフトマンの誇りにほかならない。
「そう言い切れるのは、真にオリジナルなものをつくってこそ。我々もそんなものづくりを成し遂げて、小さくても強い会社にしたい。そのためにも、シニア世代から伝承した有形無形の財産をアレンジしつつ、次世代に伝えていきたいと思っています」

刃物は危険なものとして扱われることも少なくない。しかし、道具に込められた職人の思いが伝われば、懸念されるような使い方にならないと神澤さんは言う。確かに、本来のナイフは木を切り、削り、道具をつくり、あるいは食材を切るなどして快適な生活を支えてきた、人の暮らしの相棒のような存在だ。シンプルなつくりゆえ、ほかの刃物に比べて格段に用途が広く、アイデア次第でいかようにも活用できる。まさに創意工夫の象徴のような道具である。

時代のニーズを見極め、多世代の力で人にやさしい良質なナイフをつくり、『FEDECA』を世界ブランドに育てていく。今、神沢鉄工は、大きな夢に向かって着実に歩んでいる。

  • 職人の手で1つ1つ丹念に研ぎ上げられる『It’s my knife』の刃。研磨機は若手従業員が工夫して自作したもの

  • 『It’s my knife』の刃は、硬度と粘りのある高級な鋼(はがね)。なめらかな切れ味で切り口が美しく、耐久性も高い

  • 余計な力が要らない切れ味のよいナイフを使えば、「削る」「切る」楽しさも倍増。毎日の暮らしの中で、刃物がぐっと身近になる

企画・取材・執筆・撮影・デザイン・コーディング/アトリエあふろ

エントリー企業・団体一覧