ふるさと名品オブ・ザ・イヤー

エントリーNo.03 株式会社H・R

発想を逆転させ、
質も利益も向上!
最高品質の天然アロマオイル

〈ふるさと名品〉

瀬戸内のレモンを使用した国産天然100%エッセンシャルオイル

〈問い合わせ先〉

ネロリの島cafe
〒734-0301 広島県呉市豊町大長5992-86小長港2F
TEL 0823-66-3021
https://www.hr-info.net/

〈会社概要〉株式会社H・R
〒730-0013 広島県広島市中区八丁堀12-3
キタヤマビル4F
〈事業内容〉商品開発事業支援・販路開拓支援・財務分析・研修事業・国内、海外向けマーケティング及びプロモーション・インターネット販売・各種コンサルティング・香料、天然精油、食品用基材の製造、輸出入及び販売・飲食店経営・観光業務

株式会社H・R 代表取締役

望月真弓(もちづきまゆみ)さん(57)

広島県出身。県内の大学を卒業後、食品関連の会社にて経営戦略に携わる。会社員時代にはそれまで関東や関西の商社を仲介するしかなかったとされる中四国の商社が、ダイレクトに中国など海外進出をするための足掛かりをつくるべく、上海勤務も経験した。2006年株式会社H・Rを設立、代表取締役に就任。コンサルティング事業を通じ、広島における地場産業の活性化や地域振興に力を注いでいる。

発想を逆転し、手間をかけることで
高品質のアロマオイルをつくる

広島県呉市、大崎下島。瀬戸内海に浮かぶこの島でとれるレモンは、広島産レモンの中でも「大長レモン」と親しまれ、デパートの青果売場や高級果物店での人気も高い。
そのレモンからつくられた天然アロマオイルをムエット(試香紙)に垂らすと、たちまち純度の高いレモンの香りが広がった。まさにこれこそレモンの香り、それも、レモンが持つ一番いい香りの部分だけをぎゅっと集めたかのような、レモンよりもレモンらしい、まっすぐな香りなのだ。

アロマオイルを開発したのは「株式会社H・R」。大崎下島でラボ(アロマオイル加工場)やカフェを営業しているが、これまではヒアリングや調査などコンサルティング事業を中心に展開してきた。自社での商品開発、ラボ、カフェ運営は初めてなのだという。

「2012年、大崎上島、大崎下島、豊島を管轄し、レモンの販売高日本一であるJA広島ゆたかより農商工連携の認定を取りたいと相談を受け、支援に入ったことが始まりでした」と話すのは代表取締役の望月真弓さん。無事に認定を受け、JAや他の地元企業などとともに「瀬戸内ネロリウム協議会」を発足。「JAが農商工連携の認定を取ったことも全国的に見て珍しく、農商工連携の成功事例も実は少ない」ことから認定後も相談を受けているうち「あなたが何かつくってみたら? と言われたんですよ」。悩むところではあったが「コンサルティング事業での人材をどう育てていくか、と考えていた時期でもありました。自社で実際に商品をつくることによってヒアリングや調査の際にも理解が深まるでしょうし、そういう意味でもプラスになるのではないかと考えて、始めたんです」。

望月さんは商品開発にあたり、食品・酒造・雑貨・化粧品などさまざまな業種に卸せるものにしたいと考えた。加えて人間の五感に訴えられるもの。「人間の記憶に残るものの中でも嗅覚、香りというものは自分の記憶がすり替えられることなく正確に覚えやすいものなんだそうです」との理由から、地元のレモンを使ったアロマオイルをつくることにしたのだそうだ。

日本では現在、柑橘類を使ったアロマオイルは果汁を絞ったあとの残渣からつくられていることがほとんど。試作を重ねてみても、その方法だと余計な成分が入ってしまい、よい品質のものがつくれなかった。そこで望月さんは、果汁用のレモンを仕入れ皮をむき、アロマオイルの原料を取った後、中の果肉を果汁屋に売ることを思いつく。「果汁屋さんにしても、皮があることによって苦みが出るなど余計な成分が入っていたわけなんです。先に皮をむくことは手間ですが、この方法ならアロマオイルも果汁も両方高品質なものができあがるのではないかと考えました」。

皮は必ず手作業でむき、アロマオイル精製に使用する材料はレモンの皮と水のみ。製法にもこだわり、日光に当たることで皮膚のトラブルが起こりやすくなる光毒性が発生しない「水蒸気蒸留法」を採用した。

「高いと言われることもありますけど」と望月さん。けれども、とりわけ品質がいい、贅沢だと多くのメーカーに支持され、現在H・Rのレモンアロマオイルは、ジンなどの飲料、石鹸やハンドクリームといった化粧品など数多くの商品に原料として使用されている。

  • 瀬戸内海に浮かぶ大崎下島。温和な気候と、平地が少ない地形が柑橘類の栽培に適している

  • 代表取締役、望月真弓さん。「アロマオイルは天然香料、食品添加物としても使用されています。ヨーロッパやアメリカからオーガニックの流れがやってきていますので、これからもっと需要が高まるのではないかと期待しています」

  • すべて手作業で皮をむく。機械でむくこともできるがそれではやはり品質が落ちるのだという。「無農薬のレモンですから、腐りとの闘いでもあります」と望月さん

  • 加工場に設置された蒸留器。ネロリの島のアロマオイルは、すべてこの蒸留器でつくられる。柑橘系で水蒸気蒸留法を採用するところは少なく、最適な温度や時間を何度も研究したのだそう

  • アロマオイルの他にも、柑橘をドライチップにして加えたブレンドティーなども販売しており好評を得ている

1個10円のレモンを100円にしよう
農家を支え、新たな雇用も生み出すために

大崎下島に商品をつくる加工場を置くこと。それが一番大切だと考えているという望月さんは、島の小長港にカフェ併設の加工場を開設した。品質を追求するうえでも原料の採果から製造までをスピーディーにでき、物流費も抑えられるからだそう。しかし理由はそれだけではない。島は春、甘夏の花の甘い香りに包まれる。地中海沿岸では、柑橘の花から「ネロリ」というオイルがつくられることから、望月さんはオープンした施設を「ネロリの島」と名付けた。「地元のものを使うのはもちろん、人柄、風土、歴史など地元ならではの感覚も踏まえて商品づくりがしたい」と語る。もちろん、地元の人たちも多く雇用したいのだが「大崎下島は人口が約2000人なんです」。つまり、雇用をしたくともなかなか人がいない状況なのだ。

まずは農家を支え、地場産業を活性させることが必要。それにはどうしたらよいか、何ができるのか。

「今、果汁用原料のレモンは1個10円くらいです。私はその1個10円のレモンを、100円で売る方法を考えようと思いました」。

ここで、もともとコンサルティング事業をおこなうH・Rの本領が発揮される。「果汁用として先に絞れば10円は10円でしかないですが、必要なところに必要なものだけを分解して売ることによって100円に近付く可能性は大きくなります」。取引先のメーカーも、価格は高いけれども品質がよく、なおかつ地域貢献になっていると寄り添ってくれるところが多いのだという。実際に香りを体験した人が皆感動するほどの高品質だからこそ、自信をもって広めたい。そして価値を高めていくことで「古くからの農家さん、そして島にIターンやUターンしてきた若い農家さんもきっちり生活できるようになるんです」と望月さん。

レモンのアロマオイル販売をはじめたことで、最近では他の柑橘にも注目が集まってきた。ネロリの島ではレモンの他にも、八朔、甘夏、橙、はるかのオイルを、また春には甘夏の花から和製ネロリオイルをつくっている。以前は売り物にならなかった柑橘が、オイルを通じて収入源のひとつになったのだ。

「シニア世代の活躍は、必要不可欠」と話す望月さん。ネロリの島では、顧問であるシニア世代の男性から同世代の農家へ協力を仰いでいる。新たな柑橘でオイルをつくる相談がきたときには、まず顧問、そしてシニア世代の農家に相談、協力をお願いし、湿度、土壌などどこでどのように育てたらよいか実験してもらう。

また、若い世代の農家にとっても、経験豊富なシニア世代の農家のサポートが絶対に必要なのだという。ネロリの島では、収入が安定しない若い農家を夕方からアルバイトとして雇うこともしている。そうやって定期収入を確保することで若い世代が定住し人口が増えれば、そこからまた新たな仕事や雇用が生まれる可能性も出てくるだろう。

柑橘の皮むきには、地元の障がい者就労支援施設から人材を派遣してもらい、また広島市内の本社では主婦もパートとして働くなど幅広い人材の雇用を積極的におこなっている。

井手本幸恵さん(49)は14歳から20歳まで3人の子どもを持つ母親。本社にて週3回事務として働くパートだ。ネロリの島で取り扱う商品に関する事務から開発、製造作業全般を担当している。月に1度くらいの頻度で大崎下島に行き、皮むきなどをすることもあるのだそう。出産後、仕事を再開したのは約3年前。「それまで家の中で家事しかしていないような状況だったので、世間が広がったような感じがしました」。アロマオイルに興味があり、今の仕事はそういう意味でも願ったり叶ったりだったという井手本さん。オイル製造の手作業をおこなう大崎下島の仕事も大いに楽しんでいる。

  • 丁寧に皮をむいたレモン。柑橘は摘果した瞬間から劣化が始まるといわれる。地元に加工場を置いているからこそ、新鮮なまま分解して必要なところへ届けることも可能なのだ

  • 本社で事務として働く井手本幸恵さん。「働くようになってから、家に帰ると子どもたちが洗濯物を取り込んでおいてくれたり、ご飯を炊いてくれていたりするようになりました」。子どもたちに責任感のようなものが育ったことも、働き始めてよかったと思ううちのひとつだそう

  • 甘夏やはるかなど、大崎下島で栽培されている和柑橘はレモンだけではない。しかし、商品として売ることができず持て余している農家も多いのだという。望月さんはそれらもアロマオイルにすることで、大崎下島の和柑橘に再び光をあてた

さまざまな業種が手をつなぎ
地域全体が盛り上がる仕組みをつくりたい

望月さんはラボとカフェをオープンしたのをきっかけに、柑橘の花や果実を自分で採取しアロマオイルをつくる「体験型ワークショップ」を開始。地域資源の認定も取得した。観光事業としては広島県で初の認定だそうだ。

「去年1年間で約250名の方がいらっしゃいました。ほとんど関東、関西からのお客様です」と望月さん。特に春の甘夏の花を使用する「和製ネロリ」のワークショップは、現在日本中でネロリの島でしか体験できないため人気があるのだそう。ただ、と望月さんは言う。「ほとんどのお客様が日帰りされてしまうんです」。地元には素晴らしいところがたくさんあるのだからもっと近辺を楽しんでもらいたいと考え、レンタカー会社と協力してプランを作成。2,3人で来た場合、公共の交通機関を使うのに比べ、広島市内からの交通費を一人当たり約5000円、往復の移動時間は約3時間節約できるため、お金と時間にゆとりがうまれ他の場所に立ち寄る余裕ができる。

「カフェオープンのためリノベーションする際、市からの勧めもあり地域経済循環創造事業の支援を受けました。体験型観光で地域の賑わいを創造することはもちろん、他の民間事業者も観光業として成り立っていくためにはどうしたらよいかを考えなくてはいけません。自分のところだけがよければいいということは決してないのです」。

地域資源の認定をうけたことがきっかけで、瀬戸内地域の観光事業の活性化に向け設立された「瀬戸内ブランドコーポレーション」のクラウドファンディング事業第一号となった天然エッセンシャルフレグランス「Charme de Citron」も成功を収めた。「たくさんの方々に協力していただきましたが、地元愛を持っている方が本当に多くて」と、最初はどうなることかと思ったけれどやってよかったと望月さんは語った。

「私が考えたのは結局、五感に響くものがつくりたいということと、アロマオイルのつくり方だけなんですよ」と望月さんは謙遜する。「たくさんの支援や認定も受けていますし、あとは行政やさまざまな方々に押してもらってここまで」というところが本当なのだと言う。しかし、農家や行政からみたらどうだろうか。コンサルティングやヒアリングのノウハウを遺憾なく使い、現場の農家の声を漏らすことなく聞き行政に届ける。行政の考えをしっかりと反映させ民間事業を活性化させる。これらをおこなうにあたり、望月さんを超える適任者がいるだろうか。大崎下島は、この上ない救世主を手に入れたのかもしれない。

  • ユニセックスのエッセンシャルフレグランス「Charme de Citron」。「男性にこそ使っていただきたい香りです」と望月さん。柑橘系の香りは一般的に短時間で香りが抜けてしまうのだが、こちらはレモンのさわやかな香りが長時間持続する

  • Charme de Citronが誕生し、小売販売も本格的に手掛けるようになった。手軽に楽しめるディフューザーセットは人気商品のひとつ

企画・取材・執筆・撮影・デザイン・コーディング/アトリエあふろ

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