ふるさと名品オブ・ザ・イヤー

エントリーNo.05 株式会社志満秀

地域の人々がつくる
新発想のえびせんべい
歴史を次世代へつなぐ老舗の挑戦

〈ふるさと名品〉

クアトロえびチーズ

〈問い合わせ先〉

株式会社志満秀(しまひで)
〒768-0060 香川県観音寺市観音寺町甲2744-1
TEL 0875-63-2238
https://www.shimahide.com/
https://www.quattro-ebicheese.com/

〈会社概要〉株式会社志満秀
〒768-0060 香川県観音寺市観音寺町甲2744-1
〈事業内容〉えびせんべいの製造・販売

株式会社志満秀 代表取締役社長

島 光男(しまみつお)さん(55)

香川県に本社を構えるえびせんべいの老舗・株式会社志満秀の3代目。代表取締役社長就任後は、持ち前の好奇心と冒険心が柔軟かつ自由な発想の経営につながり、創業時からのレシピを守りつつ時代の流れに乗った新商品を次々と開発。2014年に発売した「クアトロえびチーズ」が大ヒットとなり、同商品の進化版も発表。多くのアワードで高い評価を得ている。

味は本物、見た目も華やか
女子会手土産に大人気のえびせんべい

世界でも有数のエビ好き国民といわれる日本人。天ぷら、寿司、フライなど、日本の食文化に欠かせない海鮮界の人気者だが、それはお菓子の分野でも同様だ。

昔から親しまれているエビのお菓子といえば、やはり、えびせんべいだろう。口いっぱいにえびのうまみと磯の香りが広がり、お茶うけにもビールのおつまみにもぴったり。しかしどちらかというと年配のファンが多いイメージがあり、華やかさという点では、フルーツなどを使った色とりどりのスイーツに軍配が上がるのは否めない。

……と思っていたら、すごいえびせんべいに出合った。その名は「クアトロえびチーズ」。つくっているのは、香川県観音寺市にある株式会社志満秀(しまひで)だ

イタリア語で「4」を意味するクアトロの名のとおり、クアトロえびチーズは4種セットのえびせんべい。箱を開けると、黄色、青、オレンジ、緑の色鮮やかな4色のせんべいが並び、美しい色合いに思わず「わあ~!」と声を上げてしまう。

洒落たパッケージで個包装されているえびせんべいをひと口。パリッと軽やかな食感のせんべいが割れると、とたんにエビの風味が鼻を抜ける。そして口のなかでは、間にサンドされたチーズクリームと極薄のせんべいが、同時になめらかに溶けていく。エビの力強いうまみに負けないチーズのコク、ほどよい塩気が一体となり、お茶もいいがワインと一緒にいただきたくなる味わいだ。

「4種のチーズクリームをラインアップしているから、クアトロえびチーズと名づけました。黄色のえびせんべいのチーズクリームはカマンベール&ブラックペッパー、青はゴルゴンゾーラ&ハニー、オレンジはチェダー&パルメジャーノ、緑はモッツァレラ&バジル。色は、それぞれ食材にちなんだものというわけです」と教えてくれたのは、1950年に創業した志満秀の3代目であり、現在の代表取締役社長・島 光男さん(55)。

2014年に同社から発売されたクアトロえびチーズは、有名百貨店のギフトでたちまち大人気となった。メディア掲載はもちろん芸能人のSNSなどにも登場し、おいしくて写真映えする美しさとなれば、若い女性たちが放っておくわけがない。「女子会で友達に自慢したくなる、気の利いた手土産」として、今や不動の地位を築きつつある。

しかしクアトロえびチーズが人気なのは、目先の新しさや話題性があるからだけではない。この、えびせんべい界の新たなスターが誕生するまでには、何度も繰り返された老舗・志満秀の本気の試行錯誤があった。

  • ギフトに適した高級えびせんべいで愛される志満秀は、香川県・岡山県に直営店が5店舗。商品取扱店舗は全国約200軒におよぶ

  • 代表取締役社長の島 光男さん。老舗・志満秀の3代目として初代から継承したえびせんべいを進化させ、新たなヒット商品を創出

  • クアトロえびチーズは、鮮やかな4色カラーが印象的なチーズ入りえびせんべい。洒落たパッケージで女子会などの手土産にぴったり

  • 志満秀のシンプルなえびせんべい。贅沢にエビの身だけを使った上質なうまみと、口のなかで溶けるような、なめらかな食感が自慢

身だけを使った贅沢な老舗の味に
若いファンを増やす挑戦

1950年、志満秀は瀬戸内海沿岸の香川県観音寺市で創業した。創業時は鮮魚店だったが、ほどなくして瀬戸内の海の幸を使った水産加工品を手がけ始め、「えびてつ」という商品で知られるように。えびてつは瀬戸内の新鮮なエビの尾を残して殻をむき、身を乾燥させ、鉄板で焼き上げる海鮮珍味。尾を残すことでエビらしさのある形状に仕上がるが、逆に、製造過程で尾が取れてしまったエビは使えない。

「そのため私の祖父である初代は、尾が取れたエビの身でえびせんべいをつくり、売っていたんです。それが志満秀のえびせんべいの始まりです」と島社長。

主力商品の副産物としてスタートしたえびせんべいは、いつしかえびてつを超える人気商品になった。そして1988年、瀬戸大橋開通を記念して開催された瀬戸大橋架橋記念博覧会への出店で、人気と知名度が加速。島社長の父親である2代目が発案した、エビをまるごとせんべいに焼き込んだ「姿焼き」もヒットした。

しかし3代目の島社長は時代の変化を敏感に感じ取り、危機感を持つようになる。

「うちのえびせんべいはエビ本来の風味・うまみを楽しめる上、他社と異なり殻が入っていないので、食感が軽く口どけもなめらか。品質には絶対の自信があるのですが、正直、地味でしょう?」

薄く、白く、なめらかな見た目は上品で高級感がある。しかし、「昨今の洋菓子や和菓子と並ぶと目立たず、売るのもなかなか大変で」と島社長。先行きを考えると、顧客の年齢層が高いことも懸念点だったという。

若い人にも食べてもらえるえびせんべいを目指して、最初に着目したのはブライダルの引出物だ。エビは縁起物食材とされることを活かし、紅白のえびせんべいでチーズクリームをサンドする。「末永く、夫婦仲良く、くっついて」という意味を込めての企画だったが、若い人からは「おいしい!」と想定以上の高評価。

島社長は早速、チーズ入りえびせんべいの開発に着手した。コンセプトは「女子会ウケするえびせんべい」。若い女性に気に入ってもらえれば、必ずヒットするだろうとの算段だ。

まずは日本人にもなじみがあり、かつ、えびせんべいに合う先述の4種のチーズの使用を決定。ところが試作品を食べてみたらエビの風味が強く、チーズの違いがあまりわからない。

ならばと、それぞれのチーズと相性の良い食材を組み合わせた味を再現することに。この発想が当たり、エビの風味とチーズの個性が調和するおいしいチーズ入りえびせんべいが完成した。

「でも従来のうちのえびせんべいを使うと、やはり見た目が地味なんです」。悩んだ末、最終的にヒントを得たのは当時流行していた洋菓子のマカロンだった。

「せんべい生地にカラフルな色をつけてみたらどうだろう?」。今度は天然着色料を中心にさまざまな着色料を取り寄せ、何度も焼成を繰り返して焼き上がりの色を確かめる。そしてようやく現在のクアトロえびチーズが完成したときには、企画スタートから約1年が経っていた。

発売後のクアトロえびチーズの快進撃は先述のとおりだが、デビューした2014年のかがわ県産品コンクール優秀賞受賞に始まり、全国菓子博覧会農林水産大臣賞、瀬戸内おみやげコンクール優秀賞と、矢継ぎ早に華々しい賞を受賞。これらの受賞歴は話題性だけのお菓子とは一線を画す、老舗ならではの本物志向のおいしさの証といえそうだ。

  • 引出物用チーズ入りえびせんべいが若い人に好評だったことを受け、商品化に着手。黄色はカマンベール&ブラックペッパー

  • 青はゴルゴンゾーラ&ハニー。各チーズの代表的な食べ方を参考に、相性の良い食材を組み合わせたチーズクリームをサンド

  • オレンジは深いコクを楽しめるチェダー&パルメジャーノ。4種ともワインと相性抜群。えびせんべいのファン層を一気に広げた

  • 緑はモッツァレラ&バジル。えびせんべいは初代からのレシピをもとに、口のなかでチーズと同じタイミングで溶ける生地を開発

「定年や出産で退職しても、また志満秀で働きたい」
やりがいと楽しさが満ちる社風

老舗の看板を守りつつ、進化し続ける志満秀。クアトロえびチーズも進化し、えびせんべいにとろけたチーズをつけて食べる「えびチーズフォンデュ」、世界の料理の味を表現した豪華版「クアトロえびチーズ ルッソ」と、新風を吹き込む新商品が展開されている。

人気とともに高まるニーズに応えるには、安定した生産体制とスタッフの確保が不可欠だ。しかし、「このあたりは人材不足が著しい地域。募集してもなかなか採用に至りません」と島社長。

現在、製造を支える人材の多くは、地域に根ざした近隣のシニアや主婦だという。そして彼・彼女らのほとんどは、「志満秀で長年働いている」ことが特徴だ。

星川二三子さん(64)は、大手食品メーカーを経て25歳のときに社員として入社した。以来約40年間にわたり、えびせんべいを焼き続けている。「志満秀の商品を買っている人を見かけると、うれしいですね。私が焼いたからかなー、なんて思って。私以外の人も焼いてるんですけどね(笑)」

岡田百合子さん(50)は出産で退職したが、子どもが保育所に入ったのを機に再入社した経歴を持つ。「子どもが小さいうちはパート、手が離れてからは社員として働いています。担当業務は経理事務。信頼してまかせてくださっていると感じるので、やりがいがあります」

聞けば、同社では出産などで退職し、子どもが成長してから再入社する女性が珍しくないのだそう。「機会があればまた働いてください」というのが、同社の基本スタンスだ。

島社長はいう。「シニアの方は業務のスキルが高いですし、若いスタッフの教育でも頼れる存在。また主婦の方は、きっちり仕事をこなしてくださいます。そういった方々が無理なく働けるよう定年後のパート雇用や時短勤務などを導入しましたが、何より私は、スタッフに『仕事に行くのが楽しい』と思っていただきたい。挨拶なども私自身が率先して声をかけ、気持ちよく働ける環境づくりを目指しています」

先述の星川さんは、2019年に定年の65歳を迎える。定年後については、「体が続けばぜひ働きたいです。この会社に入って良かったと思うのは、友達がたくさんできたこと。アットホームな雰囲気で和気あいあいと働けるんです」とのこと。

取材の際、どのスタッフも業務の手を止め明るく挨拶してくださった。その表情・動作にはマニュアル的要素がない。自分の仕事・自社の商品に誇りを持った笑顔で、一見の客にも親しみを込めて応じてくれる。

やりがいと楽しさが共存する温かな社風は、スタッフの多くが「定年を迎えても、子育てでいったん退職しても、また志満秀で働きたい」と思う大きな要因に違いない。

  • 店舗には、長年愛される定番商品と時代を読んだ新商品がずらりと並ぶ。近年はえびせんべいに好みのプリントを施すサービスも開始

  • えびせんべいを焼き続けて約40年の星川二三子さん。同社には勤続年数の長いスタッフが多く、なかには80歳近い人もいる

  • 岡田さんは出産で退職した2年後、再入社した。「子どもが小さい頃は、周りの温かなフォローで仕事を続けることができました」

企画・取材・執筆・撮影・デザイン・コーディング/アトリエあふろ

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