ふるさと名品オブ・ザ・イヤー

エントリーNo.07 一般財団法人こゆ地域づくり推進機構

大人も子どもも
ワクワクする町づくり
全ては1粒1000円のライチから
始まった!

〈ふるさと名品〉

新富ライチ
新富茶ジェラート(緑茶・ほうじ茶)

〈問い合わせ先〉

一般財団法人こゆ地域づくり推進機構
(略称:こゆ財団)
〒889-1402 宮崎県児湯郡新富町富田東2-1-1
チャレンジフィールド
TEL 0983-32-1082(代表)
新富ライチ
http://lychee.link
koyu shop
http://koyu.shop/

〈会社概要〉一般財団法人こゆ地域づくり推進機構
(略称:こゆ財団)

〒889-1402 宮崎県児湯郡新富町富田東2-1-1
チャレンジフィールド
〈事業内容〉2017年4月に宮崎県児湯郡新富町が旧観光協会を法人化して設立した地域商社。「世界一チャレンジしやすいまち」というビジョンのもと、行政では成し得なかったスピード感で『特産品販売』と『起業家育成』を行いながら地域経済の創出に取り組んでいます。主に、1粒1000円の国産ライチのブランディング・販売や、起業家育成事業などを実施しています。

こゆ財団 代表理事

齋藤潤一(さいとうじゅんいち)さん(39)

米国シリコンバレーのIT企業で、ブランディング・マーケティングディレクターとして活躍したのち帰国。東日本大震災を機に、自身のスキルと経験を地域経済活性化に活かすべくNPO法人を設立。「ビジネスで地域課題を解決する」を使命に地域づくりや人材育成を全国各地で行い、慶應義塾大学の非常勤講師なども務める。2017年4月、こゆ財団設立と同時に代表理事に就任。

1粒1000円に納得!
1%の中でひときわ輝く生ライチ

開放感あふれるガラス張りのオフィスに入ると、スタッフの女性が笑顔で迎え入れてくれた。ゆるやかな音楽が流れる緑豊かな空間は洒落たカフェのようで、「一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(以下:こゆ財団)」という組織名称の、ちょっと堅そうなイメージとはかけ離れていた。

ここは宮崎空港から電車で約30分の、宮崎県児湯(こゆ)郡新富町。美しい砂浜が一直線に続く太平洋沿岸に位置し、気候は穏やか。2017年初夏、農業や畜産が盛んなこの町に彗星のごとく現れ、話題をさらった名品がある。その名は「新富ライチ」。「1粒1000円」の大胆な値付けがされた、「国産」で「生」のライチだ。

日本に流通するライチは約99%が台湾や中国からの輸入品で、国産はわずか1%程度。しかも輸入品の多くは冷凍品のため、日本人が生のライチを口にする機会は極めて少ない。

となれば、「国産」で「生」であることがどれほどの価値があるかは想像に難くない。そんな貴重な国産ライチの約40%は宮崎県産。そして、ここ新富町は宮崎県産ライチの多くを生産しており、1粒1000円の新富ライチはこの町の農家である森哲也さん(47)がつくっている。

森さんは家業の農業に就いた当初、主に洋ランを栽培していた。しかし父親がつくり始めたライチのあまりのおいしさに衝撃を受け、自身もライチ栽培に取り組むことを決意。10余年にわたる試行錯誤の末、自信を持って提供できるライチの生産に成功した。

森さんの新富ライチは糖度が15度以上と非常に高く、重さは1粒50グラム以上でゴルフボールよりも大きい。皮は我々が知る黒っぽいものではなく、ルビーのように鮮やかな濃いピンク色。皮をむくと透きとおった蜜のような果汁が滴り、真っ白な分厚い果肉をかじれば、想像以上の甘さとみずみずしさ、口いっぱいに広がる爽やかな香りに頬がゆるむ。「1粒1000円? どんなライチだ?」。そう思った人も、この新富ライチを見て、触って、味わえば、必ずや価格に納得するに違いない。

現に新富ライチは2018年の新富町ふるさと納税返礼品として登場し、1粒50グラム以上のものだけを集めたパッケージは2017年中の予約でほぼ完売するほどの人気ぶりとなった。東京・銀座のスイーツカフェでも取り扱われ、新富ライチを使ったケーキやパフェは、生ライチの圧倒的なおいしさで大好評に。収穫時期は5月下旬~7月の約1ヵ月半しかなく生産量が限られることもあり、注目を浴びてわずか1年半ながら、すでに「憧れの名品」となりつつある。

しかしなぜ、この素晴らしくおいしい新富ライチが突如世の中に出てきたのだろうか? そのカギを握るのが、冒頭のこゆ財団だ。

  • こゆ財団のオフィスは、緑あふれる居心地の良い空間。10数年間シャッターが下りていたギフトショップを改装してつくられた

  • 1粒1000円の新富ライチ。貴重な国産ライチのなかでも、大きさ、香りの良さ、みずみずしい甘さで群を抜く逸品だ

  • 10年以上の試行錯誤の末、新富ライチの栽培に成功した森哲也さん。森さん親子は、宮崎県のライチ生産のパイオニア

  • 新富ライチのブランディング・拡販を手がけたこゆ財団のメンバー。活動に興味を持つ人が続々と加わり、現在スタッフは16名に

ライチが人を呼び、人が人を呼ぶ
地域と人の魅力にひかれて集まる仲間

新富町は農業や畜産を基幹産業とし、豊かな地域資源に恵まれている。だが一方で、ほかの地域の自治体同様に「人口減少」「後継者不足による産業衰退」といった課題を抱えていた。

「このままでは町がつぶれる」。最初に立ち上がったのは、新富町生まれ・新富町育ち・そして大学卒業後は新富町役場の職員と、生粋の新富町っ子である岡本啓二さん(42)。町の経済活性化は急務だが、行政の立場では経済活動に制約が生じてしまう……。考えあぐねた末、岡本さんが出した答えは「役場の外に、行政では難しいことができる組織をつくる」ことだった。

当時の町長の賛同を得て新富町の観光協会を解体・一部再編成する形でこゆ財団を設立する構想を描くと、たまたま知り合った地域プロデューサーの齋藤潤一さん(39)に協力を請い、代表理事に迎えることに。岡本さんは役場から出向する形で執行理事に就任。2017年4月にこゆ財団を立ち上げ、自分たちを「地域商社」と位置づけた。そして最初に手掛けたのが、森さんがつくるライチのブランディング・拡販だった。

こゆ財団事務局長の高橋邦男さんはいう。
「森さんは苦労していいものをつくっても、従来の取引ではその価値を伝えきれず、対価も得にくい状況でした。そこで、本来の価値を伴って世に出る仕組みづくりを、僕らがお手伝いさせていただくことになったんです」

彗星のごとく現れたように見えた新富ライチは、10年以上も前から存在していた。ただ、世間に気づかれていなかった。

こゆ財団との出会いで、新富ライチは同財団が受託運営する新富町ふるさと納税の返礼品の1つとして全国の人の目に触れるようになった。同時に高橋さんらは東京の市場や百貨店などへ営業に向かい、試食イベントも積極的に実施。活動はすぐにメディアの目に留まり、取材依頼は後を絶たない状況に。新富ライチは売れ、話題は人を呼び、多くの人が新富町を訪れた。

特筆すべきは、この盛り上がりが一過性ではなく、収穫シーズンを過ぎても、2年目を迎えても、森さんやこゆ財団を応援したいという多くの人が新富町を訪れていることだ。さらには同財団とのかかわりを通して新富町の地域資源や人の魅力に感銘を受け、一緒に仕事をしたいと東京などから移住してくる人もいる。その数、約1年半で14名。視察やイベントなどを通じて新富町とかかわりが生まれた人の数はのべ5000人以上になる。人口約1万7000人の新富町で、この数はインパクトがある。

「僕らは強い地域経済をつくるために、まずライチの拡販に取り組みました。だけど、ライチがもたらしてくれたものはお金だけではありませんでした」と高橋さん。

「新しい人とのかかわりが生まれ、その人たちが新富町の特産品や美しい自然に目を向けてくださる。なかには家族で移住してきてくれる人もいて、ワクワクすることが始まっている。ライチは、その全てのきっかけになったんです」

  • 事務局長の高橋邦男さんはUターン組。ローカルメディアの編集者だったがこゆ財団設立時に誘われ、ふたつ返事で参加を決めた

  • 宮崎県内はもちろん、東京など各地で新富町のライチの試食イベントを実施。ライチの概念を覆すおいしさで話題となった

  • こゆ財団が開発したライチティー。ライチは収穫期間が短いため、商品にならなかった実を利用して加工品も開発・販売している

  • ライチは妊婦に良いとされる葉酸が豊富なことを活かし、マタニティクリームも開発。ほか、ライチでつくるビールも販売

仕事も育児も楽しいからできる!
ワーキングママの古くて新しい形

こゆ財団が次に拡販を目指しているのは、特産品の緑茶やほうじ茶を使った高級ジェラート「新富茶ジェラート」だ。茶葉の濃厚な味わいとすっきりした甘さが魅力の自信作。同財団はこうして特産品の価値を磨いて都市部に発信し、稼いだお金を地域活性や起業家育成、地域の子どもたちの教育などに再投資している。活発な地域経済が循環する「持続可能な町づくり」のためだ。

こゆ財団の再投資の一つに、地元の小学生向けに開催した、仕事やお金に関する講座がある。そこで講師として登壇した同財団のスタッフ・永住(えいじゅう)美香さん(42)は、実は受講する児童のお母さん。「〇〇ちゃんのお母さんがしゃべってる!」。子どもたちは親近感と興味を持ち、熱心に耳を傾ける。

商品開発・マーケティング担当の黒木さゆみさん(27)は、社員として同財団設立時から参加。入社時、黒木さんは妊娠3ヵ月。出産後もフルタイムで勤務する現在、子どもは基本的に保育園に預けているが、農家を回る業務や同財団が商店街で月に1回開催する朝市に連れて行くこともある。

仕事をしながらの妊娠~出産~子育てについて、「まわりの方にすごく支えられています」と語る黒木さん。農家が多い新富町には、出産してすぐに朝から畑に出るお母さんが多い。農家では小さな子どもがいても働くこと、働くお母さんとその子どもをみんなで支えることがごく普通。黒木さんは、そんな昔からの文化・風土を「働きやすい」と話す。

こゆ財団は子どものいるスタッフが学校行事などを優先できる柔軟な体制だが、育児のための特別な制度はない。それでもスタッフが仕事と家庭を両立できるのは、どちらにもやりがいを感じているから。そして制度はなくても、新富町の農家の人々と同じように周囲が自発的にさまざまな形でフォローするからだ。

「制度も大事ですが、僕らにとっては働く様子を子どもたちに伝えることも働き方改革の一つ。仕事とプライベートの垣根を低くして、親がワクワクして働く姿を子どもたちに見せたいんです」と、高橋さん。

その思いは、子どもたちにしっかり届いている。設立から1年余り経った頃、町内の小学生が町について学んだことを発表する場で、ある子どもたちがこゆ財団の活動を取り上げた。いわく、この町には面白い仕事をしている大人がいて、地域の宝物もいっぱいある。みなさんも一緒にやりませんか?——。「びっくりして、もう、涙ものでした」と高橋さんがいうとおり、この発表に誰より驚いたのは、ほかならない同財団の面々だ。

こゆ財団の活動は新富町のワクワクを創出し、子どもたちは全国に誇れる地域資源のことを楽しみながら知っていく。先述の黒木さんの夢は、「子どもが大きくなったとき、『この町には自慢できるおいしいものがいっぱいあるんだよ』といえること」。新富町には今日も、夢に向かってワクワクしながら働くお母さんたちの笑顔がある。

  • 新富町の茶園「新緑園」の緑茶・ほうじ茶を使ったジェラート。口の中でとろけた後、しっかりとしたお茶の香りの余韻が残る

  • 「稼いで、町に再投資」するこゆ財団。起業家育成や子どもの教育も積極的に行う。小学生向け講座は子どもたちにも大好評

  • こゆ財団開催の朝市は、新富町の人々の楽しみの1つに。普段は100人も通らない商店街が300~500人の人で賑わう

  • 1歳の子どもを持つ黒木さゆみさんは妊娠3ヵ月のときに入社。「妊娠中も出産した今も、多くの方に支えていただいています」

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