ふるさと名品オブ・ザ・イヤー

エントリーNo.09 株式会社うなぎの寝床

もんぺを今の時代の
ファッションに。
仕事も人生も謳歌して
地域文化を盛り上げる!

〈ふるさと名品〉

久留米絣MONPE(くるめかすりもんぺ)

〈問い合わせ先〉

株式会社うなぎの寝床
〒834-0031 福岡県八女市本町267
TEL 0943-22-3699
http://unagino-nedoko.net/
http://monpe.info/

〈会社概要〉株式会社うなぎの寝床
〒834-0031 福岡県八女市本町267
〈事業内容〉メーカー、小売、動画制作、コンサルティング、通訳、翻訳、EC構築、ウェブサイト制作など、地域文化を担保する商品・サービスにかかわる経済活動

株式会社うなぎの寝床 代表取締役

白水高広(しらみずたかひろ)さん(33)

佐賀県生まれ。グラフィックデザイナーを経て、福岡県南部・筑後地域の地域活性化プロジェクト・九州ちくご元気計画の主任推進員となる。同プロジェクトの任期終了後、2012年に築後地域の特産品を扱うアンテナショップ・うなぎの寝床を立ち上げる。現在は地域に足りない要素や機能をサポートする“地域文化商社”として、店舗運営、メーカー、他地域との交流・交易など幅広く活動。

もんぺは日本版デニム!
自由な感性でヒット商品を創出

リュックを背負って現れた白水高広さん(33)は、デニム地のスリムなカジュアルパンツをさらりと着こなしているように見えた。

「このパンツ、うちの商品のMONPE(もんぺ)なんですよ」
……もんぺとは、あのもんぺ? 驚いて生地をさわらせてもらうと、色は似ているが確かにデニムではない。もっと薄くて柔らかく、肌ざわりの良い生地だ。
「久留米絣(くるめかすり)でできているから、軽くて履き心地がいいんです。一般的なチノパンの重さは400gくらいですが、うちのMONPEは約180g。Tシャツくらいの軽さです」

白水さんが代表取締役を務める株式会社うなぎの寝床は、2012年に福岡県八女市で創業した。八女市を含む福岡県南部・築後地域の特産品・伝統工芸品を扱うアンテナショップの立ち上げからスタートし、現在は2つの実店舗とオンラインショップを運営する。

創業から6年を経て店舗運営以外の多彩な事業を展開するようになり、その1つが衣類などのメーカー事業だ。白水さんが履いていたMONPEは、メーカーとしての同社の主力商品。築後地域の伝統工芸である久留米絣でつくられたもんぺで、従来のものよりスリムで現代のファッションに取り入れやすい。

「戦時中、もんぺは活動衣として全国に広まり、このあたりでは久留米絣のもんぺが日常着や農作業着として親しまれていました。ライフスタイルの変化でもんぺを着る人は減りましたが、あるとき地元の物産館でもんぺを見て『肌ざわりが良さそうだな』と思い、買ってみたんです。そしたら本当にすごく着心地が良くて」と白水さん。

もんぺと聞くと少々時代遅れなイメージを持ちがちだが、「単にパンツとして見ていた」という白水さんの柔軟さは、ここからさらに加速する。

「デニムはもともと作業着だった。農作業着だったもんぺも、今のファッションに取り入れることができるのでは?」

そう考えた白水さんは早速、久留米絣を使ったもんぺの商品化に着手。「手持ちの反物で、もんぺをつくりたい」という地元の人の要望に応え、反物の幅でつくりやすい細身のもんぺ型紙を開発した。その型紙でつくったもんぺを店内に展示したところ好評を博し、MONPEの商品名でオリジナルの既製品を製造・販売するようになったという。

同社のMONPEは久留米絣の伝統的な文様のほか、無地、ストライプなどバリエーションが豊富で、2016年にはグッドデザイン賞を受賞。人気女性誌の通販サイトで取り扱われ、東京のセレクトショップや美術館で企画展を行うなど注目度も高い。そして何より、現代風の細身デザインと久留米絣ならではの着心地の良さから、リピーターが多いことが特徴。今では年間約1万6000本を生産する大人気商品となっている。

  • 白水高広さんのこの日のファッションは、全てうなぎの寝床のオリジナル商品。一見、デニムのようなMONPEは着心地抜群

  • うなぎの寝床八女本店は、築後地域の特産品・伝統工芸品をラインアップ。間口が狭く奥行きのある店舗の形は社名の由来になった

  • 築後地域の伝統工芸品である久留米絣を使ったMONPE。軽く柔らかな風合いで肌ざわりが良い。現代風デザインで大人気商品に

商業活動で文化を伝える
“地域文化商社”という在り方

白水さんは大学卒業後、グラフィックデザイナーとして活動していたとき筑後地域の地域活性化プロジェクト・九州ちくご元気計画に誘われ、実運営に参加した経歴を持つ。そこでさまざまな産業の人々とかかわり商品開発やブランディングに携わるうちに、あることに気づいた。

「東京などの都市部には各地域の特産品を扱うアンテナショップがあるのに、肝心の当地には意外とないんです」。各地域そのものには、地元の特産品や伝統工芸品をまとめて扱い、かつ、歴史や思い・ストーリーといった背景を伝える場所がまだまだ少ないというのだ。

「筑後地域に、築後のいろいろな特産品を扱うアンテナショップがあるといいな」

九州ちくご元気計画の任期が終わると、白水さんはそんな思いで大学時代からの友人・春口丞悟(はるぐち しょうご)さん(34)とともにうなぎの寝床を立ち上げた。

築後地域の特産品・伝統工芸品のアンテナショップで創業したうなぎの寝床だが、今では取扱商品が増え、築後地域だけでなく全国の他地域の特産品も扱うようになった。また活動領域も広がっており、店舗運営、メーカーのほか、地域活性につながる動画やウェブサイト制作、翻訳、コンサルティングなど多岐にわたる。

白水さんはいう。「実際にうなぎの寝床を立ち上げたら、伝統工芸の継承を妨げている原因のほとんどは、売上減少などの経済的な問題であることがわかってきました。だったら、売上につながる商業的な部分を僕らがやろう、と思って。僕らのスタンスは“地域文化商社”。“文化”とつくのは、単に特産品を販売するだけでなく、地域のモノや人の魅力といった文化を商業的な手段で地域の“外”に伝え、地元の産業を活性化することが目的だからです」

“地域文化商社”というスタンスを貫いた結果、同社の事業は多様化し、かかわる地域も国内の他地域、ひいては海外へと拡大中。他地域との交流・交易を通じ、いずれは他地域における築後地域の特産品販売を視野に入れるなど、あくまで地元への貢献にもこだわる。

「うちはショップと思われたり、もんぺメーカーと思われたり、コンテンツ制作会社と思われたり……。取引先によって見え方が違うみたいで面白いなと思います(笑)。ありがたいことにいろいろなお話をいただきますが、どんなオファーもできる限りのことはする。地域の文化に還元されることなら、何でもやりたいと思っています」

  • 無地の久留米絣生地でつくったMONPEは着回し自在。もんぺを現代のファッションに取り入れるという、白水さんの発想の賜物

  • 生地が軽くて動きやすいことから、「旅行のときはMONPE」という愛好者も。男女問わず、幅広い年齢層のリピーターが多い

  • メーカーとしての機能も持ち、オリジナル衣類を多数開発。首元までジップアップできる温かなパーカーなど、機能的な良品が揃う

「結婚したら、辞めてもいい」
その柔軟性が女性の活躍を後押しする

現在、うなぎの寝床のスタッフの半数以上は女性だ。しかし白水さんによると、「正直いうと、意識的に女性を多く採用しようと考えたわけではないんです」とのこと。

「でも創業時から、“地域文化商社”というからには、地域に根ざした方々と一緒に働きたいという思いはありました。そして地域の方にできるだけ長く、安定して働いていただきたいと考えていたら、自然に地元の女性が多くなったんです」

興味深いのは、同社で働く女性スタッフは社員、パート、業務委託など、雇用・契約形態がバラバラなことだ。これは白水さんの「女性の働き方」に対する柔軟な考えが色濃く影響している。

「女性の仕事は、結婚、出産、子育てなど、ライフステージの変化に影響されやすい側面があると思います。僕は女性がそういうターニングポイントに立ったとき、『子どもが欲しいから仕事をあきらめよう』とか、逆に『仕事が大変だから今は結婚できない』と思ってほしくないんです。がっつり仕事をしたい人は仕事して、もっと大切なことがある人はそちらを優先してほしい。だから、そのときの本人の思いやライフスタイルに合う雇用・契約形態を適用して時短勤務などに応じ、仕事の責任度合いやボリュームも調整しています」

そう語る白水さんは、「結婚して家庭に入りたかったら、辞めてもいいんです。そして生活が変わってまたうちで働きたいと思ってくれたら、声をかけてきてほしい」とも。

もっといえば白水さんの頭の中では、男性/女性、未婚/既婚、子どもの有無といった属性は関係ない。どのスタッフも自分の人生を大切にしてほしいから、本人が望むワークライフバランスをサポートしたいというのが根本的な考えだ。その考えは結果的に、ライフステージの変化が多い女性にとって働きやすい環境をつくり出す。

現に同社には、バリバリ仕事をこなす女性、結婚して辞める予定の女性、これから育休に入る女性など、多様なライフステージの女性がいる。そして彼女たちが異口同音にいうのは、「ここは楽しく働ける」ということ。営業として活躍する原博子さん(49)も、「仕事が充実して楽しいから、仕事とプライベートの切り替えとか、あまり考えないかもしれません(笑)。スタッフ同士も休日に一緒に出かけたりして仲がいいですよ」と語る。

同社は、店舗に訪れたお客さまや取引先など、仕事で出会った人と結婚するスタッフが多いという。「たぶん、仕事だからと肩肘はらず、素の自分に近い状態で働いているスタッフが多いんだと思います」と白水さん。仕事とプライベートの調和を無理なく図り自然体で働ける環境は、幸せなエピソードの誕生も後押しする。

  • 2店目となる旧寺崎邸では、築後地域に加え、他地域の特産品も販売。店舗の販売スタッフや通販の在庫管理業務は女性が多い

  • 営業の原博子さん。「どのスタッフも思いを持って仕事をしていて、意見交換も活発。とても風通しのいい会社だと思います」

企画・取材・執筆・撮影・デザイン・コーディング/アトリエあふろ

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