主婦やシニアの方の活躍創出部門

エントリーNO.08 南三陸復興ダコの会 YES工房

働きやすさと働きがいで地の利を活かした
新たな名品を、主婦が日々生み出せる環境

〈商品の入手・問い合わせ先〉

南三陸復興ダコの会 YES工房
TEL 0226-46-5153 / FAX 0226-46-5157
http://ms-octopus.jp/index.html

〈会社概要〉南三陸復興ダコの会 YES工房
宮城県本吉郡南三陸町入谷字中の町227
〈事業内容〉復興イメージキャラクター「オクトパス君」グッズ制作・販売を軸とした地域活性化事業

南三陸復興ダコの会 YES工房

事務局長 阿部忠義さん(58)

元南三陸町職員。今は一般社団法人 南三陸研修センター事務局長を始め、南三陸復興ダコの会事務局長、地域復興・コミュニティビジネスの仕掛け人など、阿部さんの活動は多岐にわたる。「地域活性化」や「社会貢献」に日々、生きがいを感じている。

『南三陸を明るく元気に』
復興へ歩みだした工房

宮城県本吉郡南三陸町は宮城県の北東部に位置し、仙台から車で1時間30分ほどの太平洋に面した水産業が盛んな町。三陸リアス式海岸の南端に位置し、その景観は実に美しく、多くの観光客も訪れていた所だ。しかし2011年3月11日、東日本大震災によって町は甚大な被害を受け、多くの住民と町の機能が一瞬にして失われた。

当時、町職員として町の商工観光や公民館に携わっていた阿部忠義さん(現 南三陸復興ダコの会事務局長)は、避難所で難を逃れた住民のサポートをしながらこう思ったと当時を振り返る。「避難所生活とは違う場所に、何か活動の場を設けないと、みんな後ろ向きになってしまうのではないだろうか」。

元来、ものを作ることが好きで、震災前より町のPRとして地元名産品のタコをモチーフとした合格祈願グッズ“ゆめ多幸鎮オクトパス君”を製作していた阿部さん。ものづくりを通じて住民の前向きな気持ちと復興に向けての新たなる流れを生み出そうと、避難所にいた3名の女性に声をかけ、『南三陸復興ダコの会』を立ち上げることを決意する。

『南三陸を明るく元気に』を掲げ、入谷地区で廃校となっていた1950年代の木造建物を借り受け、ここに『YES工房』を構えた。

当初は“ゆめ多幸鎮オクトパス君”や復興グッズを手がけることからはじめた。もともと震災で職を失った地元民の雇用と交流を目的として団体をスタートしたが、活動を続けるなかで、復興という部分にとどまらず、新たな製品の製作・販売を推し進めた。それらから得られる収入が工房を運営する資金にもなり、現在では自力で工房を運営している(当初は震災による緊急雇用制度なども活用。当制度は3年間で終了)。

  • オクトパス君、まゆ細工、木工品と温もりを感じる数々の製品

  • 事務局長として工房をまとめ、地域社会の未来をも見据える阿部忠義さん

地元の地の利を活かした
“ワン&オンリー”な品々

『YES工房』が手がける製品の中でも、合格祈願の縁起物として大人気となったタコ型文鎮“ゆめ多幸鎮オクトパス君”(置くと「受験に」パスする……からの語呂合わせ)。それに続けと、このところ人気・需要が高まっているのが、江戸時代からの養蚕文化に因んだ“まゆ細工”製品と、地元の間伐材を利用した“レーザークラフト”製品だ。

工房のある入谷地区は、古くは仙台藩の時代より、養蚕発祥の地として発展してきた。そうしたことを背景に、工房で活躍する女性ならではの目線で、POPで可愛らしい、まゆ細工製品を手作りしている。干支ものをはじめとする季節の行事・事物にあわせた製品、さらには紫陽花などをデザインした花のピンブローチなど、まゆで作り上げた製品は思わず目を奪われる出来栄えだ。現在では貴重なまゆは、当初コスト面から製品価格が高めの設定となってしまうことを危惧する面もあったが、「他にはない、ここでしか手に入らない!」というお客様からの声に、女性スタッフは作る喜びと充実感を体感している。地域の伝統・文化の発信を担っているという想いを胸に、日々新たな製品を手がけようと、取材当日もスタッフ同士でミーティングを重ねていたのがたいへん印象的だった。

南三陸町はその地形から山間部も多く、森林資源にも恵まれている。阿部さんらはそこに着目し、レーザー(カッター)加工機を複数購入、2014年より間伐材を利用したレーザークラフト製品の製作・販売をはじめている。間伐材の利用はコスト面、さらには循環型社会への取り組みとしてもたいへん優れている。また工房内で企画・デザインから加工までを一貫して行えるため、最近では復興に際してご縁をいただいた各方面の方々から、様々な用途への加工品の依頼を受けるようになった。「少人数で製作することで要望にもより早く対応でき、小回りが利くということが、依頼の増加にもつながっています」と、広報やデザインを担当する大森丈広さんは手応えを感じている。

  • 心を込めた細やかな手作業でひとつひとつ丁寧に製作されている

  • 自然豊かな山里の廃校を活用した工房

働きやすさと働きがい
働き手にとって快適な環境

『YES工房』は従業員12人、うち女性スタッフは10人。子育て中の主婦の方々も働いている。立ち上げが震災直後だったこともあり、工房では当初より個人の働き方(時間のやりくり)を最優先して活動している。阿部さんには「動ける人が動く、みんなそれぞれの事情を抱えているので、お互い助け合いながら働けば良い。そうして職場を回していこう」という考えがあり、それが工房内に浸透している。勤務は完全フレックスタイム。一人一人がその日に働ける時間の範囲内で働き、もし働けない人がいる場合は、担当部門内で他の人がフォローし、仕事そのものを完了させる。実にシンプルかつ理想的な働き方だ。

働きやすさと働きがい……これこそが『YES工房』にとって最大の強み。震災当時1歳のお子さんの子育て中だった牧野知香さんは「6年近く働いていて、家の次に安心できる場所です。ここ以上の職場はないんじゃないでしょうか」と語る。

4人のお子さんを持つ佐藤恵子さんは「毎日充実していて、こちらで働くことが私の一部であり、楽しい。仕事の内容は大変な部分もあるけど、みんなでやり遂げた時の達成感が素晴らしい」と話してくれた。

阿部さんは「決して労働条件がいい環境ではないかもしれませんが、それでも働きがいがあるからこそ続けられるという好例でもあるのかな」と話す。

「既存の働き方に対し疑問を感じていた。それに加えて震災を経験した。これからの快適な地域社会を作るためにも、これまでとは違った職場環境、活動スタイルをもって、持続可能な事業として『YES 工房』を確立したい」と阿部さん。地の利を活かした、新たな名品を、そこで働く一人一人が日々生み出していく。それを実現できる環境づくりこそが、地域活性化の要となる。

取材・撮影・デザイン・コーティング/アトリエあふろ
ライティング/アトリエあふろ(富成深雪、岡本靖正、佐藤福子)、N2(小野剛志)、川島 剛、永田知子

  • まゆ細工部門のリーダーとして奮闘する日々と話す牧野知香さん

  • 工房での作業が震災での心の傷を癒してくれたと話す佐藤恵子さん

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